●「いでん」ってなに?
遺伝(いでん)と聞いて何を思いうかべるでしょうか。
本来の「いでん」の意味は2つあります。
(1)親から子どもへ遺伝情報が引き継がれる「継承性」
(2)一人として同じ人はいない「多様性」
です。
●「遺伝子」とは?
私たちの体は、全部で約37兆個もの細胞でできています。
細胞一個一個の中に、遺伝子があります。
この遺伝子の情報をもとに、タンパク質が作られ、それによって体の各部の臓器が働くようになります。
ですから「遺伝子」は「体の設計図」とも言えます。
●「多様性」とは?
この世には、ひとりとして同じ人は存在しません。これはなぜでしょうか。
「ヒト」どうしで、遺伝子は99.5%が同じです。のこりの0.5%はみんな少しずつ違っていて、その違いが個人差(個性)を決めています。
私たちは、自分たちが持っている細胞から、卵子・精子を作り出します。その作り出す過程で遺伝子を少しずつ取り換えっこする「組換え」が起こります。この「組換え」により、ひとつとして同じ卵子・精子は作り出されないしくみになっています。
●「普通(ふつう)」とはなに?
人と比べてあそこが違う、ここが違う、あれができない・・・自分のからだにしても、鼻が嫌い、目がコンプレックス・・・など考えてしまうことはありませんか?
そもそも「普通(ふつう)」とは何でしょうか?
遺伝学では以前まで、正常な遺伝子とは違う遺伝子を「遺伝子変異」と呼んでいました。
しかし遺伝子の「正常」とは「ヒト集団のなかで多数派」を正常としているにすぎません。そもそもみんな違うのが当たり前だし、少数派でも病気をもたらさないような変化はたくさんあります。だから「正常」と「変異」を明確に定義できないよね、ということでバリエーションという言葉から「遺伝子バリアント」と呼ぶようになりました。
つまり多数派が「普通(正常)」なのではなく、それぞれみんなが違っている「個性」を持っているのは当然で、少数派だからといってそれが「普通(正常)ではない」ということにはならない、ということです。だから人の遺伝子に関して「普通(ふつう)」とは、そもそも存在しないのではないかと考えます。
●多様性を認め合う社会
私たちはヒトという遺伝子を引き継いだことで、この地球に生まれ、身体と心を持って生きています。そして「いでん」という自然の摂理が、一人として同じひとを生み出さない「多様性」というメカニズムを作り出しています。そのため私たちの社会には、性別の違いのほかに、病気を持っている人や様々な特徴を持っている人など多様な人がいます。だからあなたもあなたのお子さんも、周りの人も唯一無二の存在です。
他の人と違って当たり前なのです。同じ育て方をしても反応はその子それぞれに違います。
「神よ、変えられることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。
変えることのできるものを変える勇気を与えてください。
そして変えることのできるものとできないものを見分ける賢さを与えてください。」
(平静の祈り ラインホールド・ニーバー)
自分自身の遺伝子は、良い面も受け入れがたい面も、遠い昔から祖先代々受け継がれてきたものです。細胞ひとつひとつに存在する遺伝子は変えることはできません。だから顔のパーツや身長など、持って生まれた姿は、基本的には変えられません。
しかし、心はいくらでも変えることができます。顔は変えることができないとしても、心によって表情が変わってきます。
変えられないものや誰のせいでもないことを否定するのではなく、個性として受け入れ、この世界でたったひとりの尊いあなたであることの事実を、愛おしく大事に感じていただきたいな、と思います。
当たり前のことなのですが、難しく感じることもあるかもしれません。まずは今、自分が存在している奇跡に感謝をしてみてください。
「生まれてきてくれてありがとうございます。」