みなさま はじめまして!
県内周産期センターのNICUで働いている臨床心理士・公認心理師の髙橋志穂子です。
今回のコラムでは、コロナ禍におけるNICU(新生児集中治療室)の今をお伝えしたいと思います。
NICUは、早く生まれた赤ちゃん、小さく生まれた赤ちゃん、呼吸の助けが必要だったり、心臓などに病気がある赤ちゃんたちが治療を受けたりしながら、元気に大きく育つための部屋です。
ここでは、新生児を専門に治療する医師や看護師たちが、24時間体制で治療やお世話をしています。
NICUは「赤ちゃんの治療の場所」だけでなく、「赤ちゃんの発育の場所」そして「家族の育児の場所」でもあります。
お母さんやご家族は、通常は、赤ちゃんと寝起きを共にして、毎日お世話することで、少しずつ育児のさまざまを積み重ね、関係性を育んでいきます。
NICUに赤ちゃんが入院しているご家族にとっては、限られた面会時間が、赤ちゃんのお世話に慣れ、赤ちゃんとの関係を育む大切な時間になります。
その大切な面会時間ですが、コロナ禍の感染対策のため面会制限の状況が長く続いています。
平時では病院の面会時間の間に自由に何度でも長時間いてもOK、ご両親と祖父母が面会可能でしたが、現在は1日1回15分間、お母さんのみ面会可能となっています。
15分間の面会だと、赤ちゃんのオムツ交換や哺乳だけで終わってしまい、赤ちゃんとゆっくりくつろいで過ごしたり、スタッフの顔を覚えてコミュニケーションをとったりが難しくなっています。
なるべく、スタッフから声かけし、できることなど選択肢を提示して、お母さんがリラックスして赤ちゃんと会える環境づくりを試行錯誤しています。
面会できるのがお母さんだけなので、お父さんや他の家族に赤ちゃんの様子を見せられるよう、以前は使用できなかったスマホでの撮影が可になりました。また、病状説明は、お父さんにもビデオ通話でつないで行うなど工夫しています。
他にもコロナ禍によって、母子のための取り組みに様々な制限が生じています。
・両親学級、母親学級などが中止:出産前の準備や、同じ立場の人との出会いが不足する
・産科入院中の制限:面会休止、立ち合い出産休止などで、孤独なお産になりやすい
・家族からの育児支援が受けにくい:県外の祖父母の手伝いや、里帰り出産がしづらい
さらに、早産の場合には、周囲に妊娠していることをまだ知らせていない段階で出産に至ることも多く、出産したこと、赤ちゃんが入院していることを言い出しづらく、人付き合いから遠ざかる方も少なくありません。
コロナ禍でママ友や子育ての先輩とつながる機会が減っており、育児情報はスマホなどで手軽に調べることが増え、ますます孤立したり不安が強くなったりする場合もあります。
そこで、今まで以上に赤ちゃんが退院していく際には、母乳外来、助産師外来や小児科外来でのフォローアップだけでなく、地域の保健師さんをはじめとした退院後に利用できる子育ての情報や社会資源をお伝えし、地域につなげていくことを大切にしています。
もっと、こんなことをしてほしい、こんなことができないだろうかなど、ご意見がありましたら、ぜひ教えてください。赤ちゃんとご家族が安心して関係性を育んでいける環境づくりをこれからも努力していきたいと思っています。